<夢の続き 
〜Wish −願いを込めて−〜




西里 卓哉と由里の夢は終わってなかった・・・。
2人の夢は続いている・・・。
そう・・・永遠に・・・。



「西里くん〜電話だよ〜?」
卓哉の大学の教授 藤城 将人は文献を調べている卓哉に電話を取り次ぐ。
「えっ? 電話ですか? 何処から?」
将人は真剣な表情で卓哉を見つめながら話し出す。
「奥さんの居る産婦人科の人から・・・なんか慌ててる様子だったよ・・・」
「えっ? は、はい!! 今、変わります!!」
卓哉は将人から受話器を受け取ると、慌てた様子で話し出す。
「はい、西里ですけど、妻に何か・・・」
その言葉に、受話器の向こうの看護婦も慌てた様子で話し出す。
「西里さんですね? 奥さんね、さっきから産気付いたんです・・・」
「えっ!! 由里ですか!? その・・・産まれたんですか!!」
驚く卓哉に、看護婦は慌てた様子で話し出す。
「はい・・・まだ・・・すぐに産まれるってわけじゃないんですが、2、3時間の間には・・・
 だから、今からこっちに来れませんか? 奥さんも旦那さんが来ないとダメだって言ってるんです・・・」
卓哉はその言葉を聞くと、慌てた様子で話し出す。
「わかりました!! 今からそちらに向かいます!!」
電話を切ると、将人は心配そうな表情で話し掛ける。
「西里くん・・・奥さん・・・どうしたの?」
その言葉に、卓哉は呼吸を整えながら話し出す。
「そ、その・・・子供が産まれるんです・・・子供が・・・」
慌てている卓哉に、将人は真剣な表情で見つめながら話す。
「そうか・・・じゃあ、資料集めはいいから、西里くんは病院に行きなさい・・・
 そうだ・・・今から僕がタクシーを呼んであげるから、それで行きなさい・・・」
「ありがとうございます・・・じゃあ、カバン取ってきます!!」
卓哉は将人に頭を下げると、慌てた様子で研究室から出て行った。
将人は苦笑いを浮かべ、頭を掻きながら話す。
「あんなに取り乱す西里くんって初めて見るかもなぁ・・・」
助手の女性の1人が将人を笑顔で見つめながら話し出す。
「無理もないですよ〜自分の子供が産まれるんですもん・・・」
その話に、もう1人の助手が笑顔で将人を見つめながら話す。
「そうだよね〜それにしても・・・これで西里くんの人気落ちちゃうかも〜」
その言葉に、助手の女性が不満そうに話す。
「え〜っ!! そんなことないよ〜!! 子持ちでもカッコいいのは変わんないもん!!
 でもさ、でもさ〜西里くんの子供だから、きっと可愛いに決まってるよね〜!!」
「そうだよね〜!!」
将人は苦笑いを浮かべて、手をポンポン叩きながら話す。
「はい、はい・・・そういう話は後で・・・今は資料を集めるのが先ですよ〜」
将人の言葉に、助手たちは不満そうに返事をする。
「は〜い・・・」
将人は窓の外から見える青空を見つめると、小さな声で呟く。
「西里くんが父親か・・・なんか・・・不思議だな・・・」
そう呟いている将人に、助手の1人が不満そうに話す。
「藤代さんも手伝ってくださいよ〜!!」
「はい、はい・・・」



卓哉はタクシーに乗り込むと、慌てた様子で運転手に話し掛ける。
「市民病院までお願いします!! 子供が産まれるんです!!」
その言葉に、運転手は驚いた様子で話す。
「子供? それは大変だ・・・じゃあ、出来るだけ飛ばすから・・・」
「は、はい・・・お願いします・・・」
卓哉はタクシーの料金メーターに付いている時計を見つめると小さな声で呟く。
「早く・・・早くしないと・・・早く・・・」
そう呟いている卓哉に、運転手が話し掛ける。
「お客さん、そんなに慌てなくても間に合いますから・・・間に合ってみせますから・・・」
その言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「そうですね・・・すみません・・・どうも・・・気ばかり焦って・・・何せ・・・初めて・・・なんで・・・」
運転手はバックミラー越しに卓哉を見つめながら話す。
「わかりますよ・・・僕も子供が産まれる時は、ホント・・・パニックだったから・・・
 それが初産なら尚更ですよ・・・頭の中・・・ゴチャゴチャになっちゃいますね?」
「はい・・・俺・・・父親になるんですね・・・なんか・・・信じられないです・・・」
卓哉の言葉に、運転手は笑顔で見つめながら話す。
「みんな・・・そうですよ・・・自分が親になるなんて思ってもみなかったことですから・・・」
その言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「そう・・・ですね・・・俺も親になるなんて思ってなかったです・・・」





そう・・・10ヶ月前までは・・・そう思っていた・・・。





回想・・・。
由里は照れくさそうに笑いながら、卓哉に話し掛ける。
「エヘヘッ・・・赤ちゃん・・・出来ちゃいました・・・」
由里の言葉に卓哉は一瞬、呆然とするが、大きな声で驚く。
「こ、子供!? ちょ、ちょっと!! ホントッ!?」
驚く卓哉に、由里は照れくさそうに笑いながら話す。
「うん・・・最近、調子悪いって言ってじゃない?」
「うん・・・言ってた・・・でも・・・風邪だって・・・」
由里は自分の腹部を優しく撫でながら話す。
「うん、私もそう思ってね、病院行ったら・・・『3ヶ月』って言われちゃった・・・
 エヘヘッ・・・私もすっごく驚いたけど・・・やっと・・・赤ちゃん・・・出来て嬉しいの・・・」
「そっか・・・そっか・・・おめでと・・・由里・・・」
由里は不満そうに卓哉を見つめながら怒る。
「もう〜!! 卓哉のその『おめでと』って、なんか他人事みたいじゃない〜!?
 この子は卓哉の子なんだからね!! 私だけの力じゃないんだからね!!
 2人の『好き』って気持ちの形なんだからね〜!! もう〜!!」
不満そうな由里に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「そう・・・そうだね・・・俺の子なんだよね・・・なんか実感が無くて・・・」
由里は卓哉の手を自分の腹部に当てると、穏やかな表情で話し出す。
「うん・・・私もね・・・実感が無いよ・・・でも・・・今、私の中でね、この子が育ってるんだよ・・・
 私と卓哉に会うのを楽しみに待ってるんだよ? きっと・・・待っているんだよ・・・」
その言葉に、卓哉は由里の腹部を優しく撫でながら話す。
「そだね・・・そだね・・・」





苦しそうな表情を浮かべる由里に、真由が笑顔で話し掛ける。
「今ね、卓哉くん、こっちに向かってるから・・・だから、頑張って・・・ね?」
由里は真由の言葉を聞くと、痛みに耐えながら話す。
「は、はい・・・私・・・頑張り・・・ます・・・頑張り・・・ます・・・
 この・・・ツラさ・・・耐えないと・・・この子・・・産まれないんですよね・・・」
真由は由里の額に光る汗をタオルで拭いながら話す。
「そうだよ・・・新しい命を受け入れるってね、この痛みに耐えることなんだから・・・
 お腹の中に居る子も、今・・・由里さんと卓哉くんに会いたいって頑張っているんだからね・・・」
「はい・・・はい・・・」
2人の所へ、美加が慌てた様子で現れる。
「由里さん・・・由里さんのお父さんが・・・」
美加の言葉に、由里は驚いた表情を見せる。
「お、お父さん・・・嘘・・・」
その言葉に、友大が由里に話し掛ける。
「由里・・・もうすぐ西里くんも来る・・・それまで頑張れ・・・な?」
友大の言葉に、由里は驚いた様子で話す。
「お、お父さん・・・どうして? どうして? 仕事は? 仕事?」
その言葉に、友大は由里の髪を優しく撫でながら話す。
「自分の娘が子供を産むっていう時に仕事なんてしていられないだろ?
 今まで何もしてやれなかったんだ・・・少しでも親らしいことをしないとな・・・」
その言葉に、由里は涙声で返事をする。
「・・・うん・・・ありがと・・・お父・・・さん・・・」





お父さんと仲直り出来たのも・・・みんな・・・この子のおかげかもしれない・・・。





回想・・・。
「そうか・・・子供が出来たのか・・・」
卓哉は真剣な表情で友大を見つめながら話す。
「はい・・・この秋には産まれる予定です・・・」
由里は友大を真剣な表情で見つめながら話す。
「お父さん・・・産まれてる子のこと・・・認めてくれるよね?
 私・・・お父さんに・・・この子のおじいさんになって欲しい・・・
 だから・・・この子のこと・・・認めて欲しい・・・私の夢・・・認めて欲しい・・・です・・・」
由里の言葉に、卓哉も友大に深々と頭を下げながら話す。
「俺からもお願いします・・・由里の夢・・・認めてやってください・・・」
友大は照れくさそうに天井を見つめると、小さな声で話し出す。
「僕で・・・いいのか?」
「えっ?」
驚く2人に、友大は真剣な表情で話し出す。
「由里の気持ちをわかることの出来なかった僕でいいのか? 君達は?
 僕が君達の子供を認めて、これから後悔することになってもいいのか?」
友大の言葉に、卓哉は由里を笑顔で見つめながら話す。
「あなたしか俺達の子供を見つめてくれる祖父になれる人は居ないんです・・・
 由里の気持ちがわからない・・・それなら今からわかればいいだけの話です・・・ね? 由里?」
「うん!! 時間はたくさんあるんだもん・・・今からでも遅くないよ・・・
 それにね、認めて・・・後悔なんてしないよ・・・だってさ・・・私のお父さんだもん・・・」
2人の言葉に、友大は少し考え込むと照れくさそうに話す。
「そうだな・・・時間を掛けて・・・やり直すって決めたんだったよな・・・
 わかった・・・僕でよかったら子供の祖父になってもいい・・・」
その言葉に、由里は涙声で返事をする。
「うん・・・ありがと・・・」





卓哉はタクシーから降りると、走りながら病院の入り口に入る。
入り口にはあずさとサキが卓哉を待っていた。
「卓哉〜!! 早く〜!! 今すぐにでも産まれそうなんだから!!」
卓哉は肩で息をしながら、あずさに話し掛ける。
「よ、よかった・・・まだ・・・産まれてないんだね・・・よかった・・・」
サキは卓哉の肩をポンと叩くと、真剣な表情で話し掛ける。
「早く由里の所に行ってあげて・・・あの子、卓哉くんを待ってるから・・・
 場所はわかるよね? 5階の産婦人科の分娩室だから!!」
「はい!!」
卓哉は返事をすると、再び走り始めて分娩室に向かった。
あずさは笑顔で卓哉の後ろ姿を見つめながら話す。
「サキさん・・・私も・・・子供・・・欲しくなっちゃいました・・・
 命が産まれる瞬間って、こんなに・・・人を一生懸命にさせるんですね・・・」
その言葉に、サキは笑顔で見つめながら話す。
「そうだね・・・みんな・・・新しい命の笑顔を見たいから・・・新しい命に自分達の笑顔を見せてあげたいから・・・
 さぁ・・・私達も笑顔・・・見に・・・見せに行きましょう・・・ね?」
「はい・・・」
2人はゆっくりとした足取りで分娩室に向かった。



卓哉は息を切らせながら、ベッドで横になっている由里の所に着いた。
「ゴメン・・・由里・・・遅くなって・・・」
由里は卓哉の顔を見つめると、涙声で話す。
「もう・・・今まで・・・すっごく不安だったんだよぉ・・・怖かったんだよぉ・・・
 もう・・・卓哉居ないまま・・・この子・・・産まれちゃうかと思ったんだよぉ・・・」
卓哉は泣いている由里に、笑顔で見つめながら話す。
「うん・・・うん・・・もう俺が側に居るから・・・だから・・・大丈夫・・・ね?」
「うん・・・」
卓哉は看護婦に真剣な表情で話し掛ける。
「あの・・・俺も出産・・・立ち会っていいですか? ここ・・・立ち会いって出来ますよね?」
卓哉の言葉に驚く一同。
看護婦は卓哉を見つめると、真剣な表情で話し出す。
「はい、出来ますよ・・・先生に旦那さんも立ち会うって話してきますね?」
看護婦はそう言うと、部屋から出て行った。
雫は卓哉を見つめると、驚いた様子で話し出す。
「卓哉・・・あなた・・・どうして? 別に立ち会わなくても・・・」
卓哉は苦しそうな由里の頬を優しく撫でながら話す。
「さっきも言っただろ? 由里の側に居るって・・・由里を1人で分娩室には行かせたくない・・・
 俺・・・これでも父親になるんだよ・・・父親になる瞬間をこの目で見ておきたいんだよ・・・
 男の俺には何も出来ないかもしれない・・・でも、由里の手を握ることぐらい出来るだろ? な? 由里?」
卓哉の言葉に、由里は嬉しそうに返事をする。
「・・・うん・・・卓哉が側に居てくれたら、最高に心強いもん・・・」
真由は真剣な表情で卓哉の顔を見つめながら話す。
「そだね・・・卓哉くん・・・ちゃんと由里さんを守ってあげて・・・
 ここからは卓哉くんと由里さん・・・今から産まれてくる赤ちゃん・・・3人の戦いだから・・・ね?」
「はい・・・」
看護婦は卓哉達の所に戻ってくると、真剣な表情で話し出す。
「準備が出来ました・・・旦那さんと奥さん・・・行きましょうか?」
「はい・・・」



分娩室に入ると、由里は苦しそうな表情で話し出す。
「卓哉・・・」
「ん? 何?」
由里は苦しそうに息をしながら、卓哉に話し掛ける。
「私ね・・・ずっと・・・ずっと・・・夢・・・だったよ・・・
 大好きな人の赤ちゃん・・・産むこと・・・ずっと・・・夢だったよ・・・」
その言葉に、卓哉は由里の頬を優しく撫でながら話す。
「そっか・・・」
由里は痛みに耐えながらも、卓哉に必死に笑顔を作りながら話す。
「私の夢叶ってもね・・・また・・・夢・・・探そうね? 今度は3人でね?」
「うん・・・わかった・・・一緒に探そう・・・」
卓哉はそう言うと、由里の右手を包み込むようにして握った・・・。










そして・・・大きな泣き声と共に、新しい命が産まれた・・・。










卓哉は出産を終えた由里に笑顔で見つめながら話し掛ける。
「由里・・・お疲れ様・・・元気な子・・・産まれたよ・・・」
由里は照れくさそうに生まれてきた子供の頬を撫でながら話す。
「うん・・・私の身体の中に・・・この子、ずっと居たんだね・・・ずっと私達を見てたんだよね?」
「そうだね・・・これからもこの子を見つめていかなきゃ・・・守っていかなきゃ・・・ね?」
卓哉の言葉に、由里は笑顔で見つめながら返事をする。
「うん・・・」
「さぁ・・・みんなの所・・・行こうか・・・」
「うん・・・」



2人は産まれてきた子供を見つめると、大きな歓声を上げる。
美加は由里の隣りに居る子供を感激した様子で見つめながら話す。
「可愛い〜!! メチャクチャ可愛い〜!!」
由里は子供を見つめながら、美加に話し掛ける。
「うん・・・卓哉くんに似て・・・ホント・・・可愛いな・・・」
由里の言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「俺に似てって・・・この子、女の子だよ・・・俺に似たら困るだろ・・・後々・・・」
卓哉の言葉に、あずさは笑いながら話す。
「そうだよなぁ〜こんな融通の利かない子になってもらっちゃなぁ・・・私達も困るよなぁ・・・」
あずさの言葉に、卓哉は不満そうに呟く。
「・・・ったく・・・そんな子にならないって・・・母親の由里が居るだろ・・・な?」
卓哉の言葉に、由里は照れくさそうに笑いながら話す。
「うん・・・でも・・・父親の卓哉にも頑張ってもらわなきゃダメだから・・・ね?」
由里の言葉に、卓哉は照れくさそうに天井を向く。
美加は由里の隣りに居る子供を見つめながら、卓哉に話し掛ける。
「ねぇ、ねぇ? この子の名前、考えた?」
美加の言葉に、由里は嬉しそうに卓哉を見つめながら話す。
「エヘヘッ・・・もう決めてあるんだよね? ね? 卓哉?」
「あ、あぁ・・・女の子だってわかってから・・・少し前に由里と2人で決めたんだ・・・
 西里・・・未希って・・・決めていたんだ・・・少し前から・・・な? 由里?」
由里は眠っている未希の顔を優しく撫でながら返事をする。
「・・・うん・・・」





あれは・・・3ヶ月前ぐらいだったかな・・・。
由里は嬉しそうにお腹を優しく撫でながら、卓哉に話し掛ける。
「この子・・・女の子かぁ〜? 名前・・・考えてくれた?」
その言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「もう・・・由里も一緒に考えるって言ったでしょ? 2人の子供なんだから・・・」
卓哉の言葉に、由里は苦笑いを浮かべながら話す。
「そうだったね・・・私ね、このお腹の中にいる赤ちゃんは2人の夢の続きだと思うの・・・
 だからね、そういう・・・夢のある・・・この先の・・・希望のある・・・名前にしたいな・・・」
由里の言葉に、卓哉は笑顔で見つめながら話す。
「そっか・・・夢の・・・希望の・・・か・・・」
卓哉はそう言うと、辞書を片手に名前を書き始めた。

西里 未希

由里は卓哉の書いた名前を小さな声で呟く。
「未希・・・ちゃんって言うの? これ?」
「うん・・・由里の言った未来の希望っていうのをとって、未希って名前にしたけど・・・どかな?」
由里は嬉しそうに卓哉に抱きつきながら話す。
「うん!! すっごくいいよっ!! 未希・・・すっごく可愛いよ!! これにしよう!! ね!!」
嬉しそうな由里に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「ゆ、由里・・・これ、俺が1人で決めたっぽいよ・・・由里も考えてよ・・・」
由里は嬉しそうに卓哉を見つめながら話す。
「そんなことないよ〜私のこの子に対する気持ちを卓哉が名前にしてくれた・・・
 だから・・・これは2人で考えた名前だよ・・・この子だって喜んでくれるよ・・・きっと・・・」





由里は嬉しそうに眠っている未希の顔を優しく撫でながら話す。
「・・・って・・・そういうわけで・・・この子は今日から未希ちゃんだよ・・・ね? 卓哉?」
由里の言葉に、卓哉は照れくさそうに天井を見つめながら呟く。
「・・・ったく・・・そんなこと・・・話さなくてもいいのに・・・」
美加は照れている卓哉を茶化すように話し掛ける。
「照れちゃって・・・本当はすっごく嬉しいくせに・・・」
美加の言葉に、真由は笑顔で卓哉を見つめながら話す。
「うん・・・嬉しいし・・・幸せだよね? 3人とも・・・」
真由の言葉に、由里は未希の頬を優しく撫でながら呟く。
「はい・・・今・・・すごく・・・幸せ・・・最高に・・・幸せです・・・」





数日後・・・。
由里と未希は病院から退院して、家に戻ってきた。
卓哉はベビーベッドで眠っている未希の様子を見つめながら話す。
「俺・・・本当に父親になったんだな・・・なんか・・・実感無いな・・・」
その言葉に、由里は笑顔で卓哉を見つめながら話す。
「そだね・・・私の中に未希ちゃんは居たんだよね・・・ホント・・・これってスゴイことだよね?」
卓哉は由里の方を優しく抱くと、小さな声で話す。
「そうだな・・・人としての幸せって・・・このことかもしれないな・・・」
由里は卓哉の肩に寄り添うと、小さな声で話し出す。
「うん・・・だからね・・・私・・・もう1人ぐらいなら・・・欲しいな・・・」
その言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「由里・・・この前は『こんなに痛いの嫌だから、もう打ち止め』って言ってだろ?」
卓哉の言葉に、由里は苦笑いを浮かべながら話す。
「エヘヘッ・・・産んだ直後はそう思ったけど、こうやって未希ちゃんの寝顔見てると、もう1人・・・って・・・
 だって・・・この子・・・私と卓哉の『好き』って気持ちの本当の形だもん・・・
 だから・・・もう1人・・・ぐらいなら・・・いいかな?って・・・ダメかな? 卓哉?」
由里の言葉に、卓哉は苦笑いを浮かべながら話す。
「ダメってことはないけど・・・由里は未希を産んだばかりだから、少しお休みした方がいいよ・・・
 それに、今は未希のことだけ考えてあげないと・・・その先のことよりも今は未希のこと・・・想ってあげないと・・・」
由里は眠っている未希の頬を優しく撫でながら話す。
「うん・・・そだね・・・今は未希ちゃんに幸せを与えてあげないと・・・
 これからも宜しくね? 未希ちゃん・・・それに・・・卓哉・・・」
「うん・・・」






幸せは続いていくよ・・・。





そう・・・永遠に・・・。





<あとがき>